美大時代の若い頃はコピー機を使って好きなイメージをコピーして集めるという収集癖があり、山積みになっていく紙を切っては、コラージュを作りアニメーションを作るのが好きでした。時折、イメージではなく、読み終わった本の文章を切り取って新しい文章に組み直す事で自分では想像も付かなかったような詩的な風景を生み出すことができ、その訪れたことのない頭の中にだけ現れるその風景の中を散歩して満足するという時期もありました。思い返すと、その頃の私は、形として存在していたものが一度崩壊することで(この場合、私によってハサミで切られる)、新しく生まれるものの糧になるという自然界の循環を模倣したかのようなこの一連の作業には何か秘密があるのではと心の奥で感じていたようでした。
またある時、思い出とはコラージュのようなものだと思ったことがあり、記憶という曖昧なものも、過去にみた風景や経験の断片を繋ぎ合わせる事で「記憶」として現在に立ち現るものだと考えるようになりました。現実を見る方法もコラージュのようで、私たちは毎日世の中に溢れる情報を受け取り、過去の記憶をヒントにその中からどの情報を切り取るかを決定する事で、各々が見たい風景を「現実」風景として眺めているだけなのかもしれません。その組み合わせは千差万別で、そこから立ち現る風景は自分だけの風景であり、それを私は一人一人が持つ創造力だと思っています。沢渡温泉エリアに訪れる人々、一人一人の創造風景コラージュを形成する材料の断片の一つとして参加できればとおもいます。
CV
ロンドンと京都を拠点に活動。Chelsea College of Art and Designにてファインアートメディア学士、Royal College of Artにて、アニメーション修士を取得。
アニメーションを基軸にパフォーマンス、インスタレーション、日用品、VRなど異なる媒体を制約なく使用し、コラージュの手法を通じて異なる要素を組み合わせることで新たな視点を生み出しシュルレアリスム、神話、オカルトの風景にアプローチします。主な展示歴に「VOCA展2019」(東京上野の森美術館)、 「The Interpreter」 (英国、2015) など。オーバーハウゼン、オタワアニメーションフェスティバルなど、国際的なフィルムフェスティバルでの受賞歴、上映歴多数。
LINK
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