
この地で響いた祭典の余韻が中之条の山あいに溶け込み、いま、新たな季節の鼓動へと姿を変えようとしています。私たちは「第10回」という一つの大きな円環を閉じ、その熱量を確かな糧として、次なる10年、そしてその先へと続く未知の領域へ足を踏み出します。20年の歳月が耕し続けてきたこの土壌から、いま再び、瑞々しい表現の芽が吹き出そうとしているのです。
この新たな幕開けに際し、私たちがこれからの旅路の道標として掲げるのは、18世紀の詩人であり画家でもあったウィリアム・ブレイクが、その詩集『無垢の歌』の中に遺した「響きわたる草原(The Echoing Green)」という一篇の詩です。思えば、私たちの歩みは常に「理想郷(ユートピア)」への探求でもありました。第9回においては、ドイツの地理学者セバスチャン・ミュンスターの『コスモグラフィア』をテーマに、未だ見ぬ道を辿る行為自体を作家の創作活動に重ね合わせました。そして地図なき場所へ向かうその足跡の果てに、私たちは第10回のテーマ『光ノ山』という桃源郷へと到達しました。そこでは、かつての産業(養蚕や鉄鉱石の採掘など)が放った光の先に、アーティストが描き出した「新しい世界」の風景が鮮やかに広がっていました。
2027年、私たちが向かう「響きわたる草原」は、これまでの探求をさらに深め、ブレイクが想像した無垢(Innocence)の世界を、ここ中之条に現出させる試みです。ブレイクが描いた草原では、太陽が昇り、祝祭の鐘の音とともに春が祝福され、子供たちの無垢な歓声が緑の野原を駆け回ります。その傍らでは、老いた樫の木の下で老人たちが、かつての自分たちの姿を子供たちに重ね、穏やかに微笑んでいます。
ここには、過去(老人)と未来(子供)が同じ草原で交差する瞬間が鮮やかに描き出されています。それは、過ぎ去った記憶と、これから生まれる希望が、同じ今という時間、同じ土という空間で手を取り合う、奇跡のような共鳴です。かつてこの地を愛し、耕し、やがて土へと還っていった人々の魂。そして、その土の上で新しい遊びを始める子供たち。中之条という土地が何千年も繰り返してきたこの「生命の循環」こそが、今回テーマにした「ECHOING GREEN」です。
このテーマにおいて、私たちが象徴的に用いる草原(GREEN)とは、中之条という広大な土地であり、そこに生きるコミュニティという名の肥沃な土壌に他なりません。緑の色には、厳しい冬を経て再び芽吹く再生への祈りと、絶え間なく繰り返される輪廻、そして受け継がれていく生命の営みの意味を込めました。第10回というひとつの大きな円環が閉じ、今また第11回という新しい命が萌え上がろうとしています。死は終わりではなく、次の生を育むための沈黙であり、このコミュニティという草原は、過去の記憶を養分として、より深く、より鮮やかな緑を湛えて未来を待っています。
そして、その広大な草原を震わせ、命の連鎖を可視化させる響き(ECHO)こそが、アーティストたちが放つ作品です。芸術とは、決して孤立した点ではなく、コミュニティという草原に向かって放たれる、ひとつの切実な呼びかけです。アーティストが土地の声に耳を澄ませ、そこから掬い上げたエコー。それは彼らが生み出す作品そのものであり、残響となって空間を満たしていきます。
第11回中之条ビエンナーレ。それは、過去から手渡されたバトンを、次の世代へと繋ぎ、未来へと響かせるための祝祭です。太陽が昇り、草原が輝き、やがて影が伸びて夜が訪れる。けれど、その暗闇の中でもエコーは絶えることなく微かに響き続け、次の世代の夜明けをじっと待っています。終わりは常に始まりを孕み、一人の表現者が残した響きは、必ず新しい何かを芽吹かせる力となります。
砂粒の中に世界を見つめ、一輪の花に天国を見るように、私たちは中之条というこのひとつの草原から、生命の大きな循環と、ブレイクが夢見た無垢なる理想郷を感じ取ろうとしています。過去と未来、老人と子供、生と死が、ひとつの緑の上で交差するこの場所で、あなたもまた、ひとつの大切なエコーとして加わってください。
私たちの声が重なり合い、共鳴したとき、中之条の草原は、かつてないほど多層的な、永遠の緑に染まりゆくはずです。
新たな命の継承が始まるこの場所で、再び皆さまと創造の響きを交わせることを、心より楽しみにしております。
中之条ビエンナーレは、群馬県中之条町で隔年開催される国際現代芸術祭です。雄大な山々に囲まれた風景やラムサール条約湿原、長い歴史を持つ温泉郷、養蚕天蚕文化、伝統が受け継がれる民俗行事や祭事など、中之条町には他では見られない美しい里山文化に触れることが出来ます。アーティストは特色ある山村地域に開かれたアーティスト・イン・レジデンスで滞在制作を行い、その成果を中之条ビエンナーレで発表します。この度、第11回をむかえる中之条ビエンナーレ2027では、国内外から創造的、革新的なアイデアやプロジェクトをもつ多分野のアーティストを広く募集しています。

8月中旬に選考結果を、応募対象者全員に<郵送>または<メール>にてご連絡します。
開催日:2026年9月5日(土)
対面/オンライン(Zoomを予定)で開催します。
参加にあたっての重要事項を説明しますので、原則、作家本人が参加してください。
期間:2026年9月6日(日)~10月5日(月)
会場下見期間として、実際に現地で会場をご覧になれます。希望の視察会場とスケジュールを事務局にご提出ください。
会場を回るバスツアーも予定しています。(ツアー日程は選考結果に同封してお知らせします)
※初参加の方は必須、参加経験者は任意
※視察期間終了後の会場下見を希望する場合は事務局までご連絡ください。
締切:2026年10月8日(木)
展示希望会場と展示プランを、期日までにご提出ください。
ご提出いただいた書類を基に展示会場の調整をおこないます。なお運営の判断により、ご希望に添えない場合がございますので予めご了承ください。
※会場やレジデンスまでの移動は基本自力での移動となります。展示会場によっては公共交通が無いため、運転免許証の所持が必要となる場合があります。
2026年12月下旬には会場調整を終了し、展示会場の決定通知を順次おこないます。
展示会場の決定通知に同意をいただき、正式な参加者となります。展示会場の調整に賛同できない場合は、参加をご遠慮いただくことがあります。
参加決定後は、事務局の指示のもと現地リサーチなどが可能となります。
なお、中之条町での滞在制作(レジデンス利用)は2027年4月以降より可能となります。
以下をご準備のうえWebフォームよりご応募ください。
2026年7月12日(日)23:59
※イメージシートはポートフォリオのページ数には含まれません
2026年7月12日(日)当日消印有効
以下に則した「ポートフォリオ」と「イメージシート」を事務局宛に郵送してください。
※パソコンで記入する場合の推奨環境:Adobe Acrobat
※応募用紙/イメージシートはポートフォリオのページ数には含まれません
〒377-0494 群馬県吾妻郡中之条町大字中之条町1091「中之条ビエンナーレ事務局」
電話:0279-26-7727 (平日9:00~17:00)
※ポートフォリオ在中と表面に明記